地下室を実現するため知っておきたい4つのポイント
地下室という言葉に、どのようなイメージをお持ちでしょうか。
暗くジメジメとしたものでしょうか。それとも、楽器などを楽しむためのエリアというプラスのイメージでしょうか。
いずれにせよ、地下室は床面積を広げるという大きな利点があります。
快適な地下室のつくり方や費用の問題など、事前に知っておきたいことをご説明します。
地下室で「楽しめること」4選
地下室は土中にあり、周囲をコンクリートで囲まれているという特性から、色々な楽しみ方ができる場所です。
シアタールーム
時間がなく、なかなか映画館に足を運ぶことができないという方にとって、自宅でのDVD鑑賞が唯一の楽しみかもしれません。「大きなスクリーン・大音量で映画を観たい」というとき、音を外部に漏らすことの少ない地下室が力強い味方となってくれます。
音楽スタジオ
楽器演奏が趣味、もしくはお仕事である方にとって、楽器の持ち運びをせずに自宅で楽しめるのは夢ではないでしょうか。
楽器の練習(レッスン)は、小さな音で満足できるものではありません。適切な音量に耐えられる部屋があってこそ、楽器そのものの音色や音の強弱を楽しめるものです。
ワインセラー
ワインを楽しむ方にとっての憧れは、ワインセラーです。
特に長期熟成するタイプのワインは年間を通して15度前後・70%前後の冷暗所での保存が望ましいとされていますので、地下室は最適です。
創作活動の場
絵や彫刻、手芸やプラモデルを楽しむ創作の場が欲しいという方にも地下室は人気です。外部の視線が気にならない静かな環境を確保するために地下室はとても便利です。
また、このような趣味を楽しむためには、資料となる書籍も多く手元に置いておきたいものですので、壁面に書棚を作ることで、本の重量を気にせずに増やしていけます。
地下室にまつわる心配事は何?
住宅の下部に埋め込むように形作る地下室は、いくつかの面でのデメリットがあります。憧れの地下室を検討する前に、その「気になること」を理解しておきましょう。
建築費用のこと
地下室は限られた土地の中に有効な空間を作ることが出来るという素晴らしいメリットもあるのですが、やはり気になることの一つに費用があります。まずは地中に空間を作るには土を掘ることが必要です。この土を掘るという作業には、重機が必要ですし、取り除いた土を捨てる費用も必要です。
さらに、設計における構造計算でも地下部分が増えます。また、地上部分は木造であっても地下の構造体は鉄筋コンクリート造でなければならないので、その分の材料費も増えます。もうひとつ、地下には水分が含まれていますので、湿気対策や防水の為の特別な処置も必要になってきます。こういった工程を加算していくと地下室だけで1坪あたり50万円程度上乗せの費用がかかりますし、もしも地盤が弱い場合は補強するための費用も上乗せしなければなりません。
湿気がこもりやすい
土に埋まった状態で温度が一定の地下室は、特に夏場に結露しやすいという特徴を持っています。夏の湿った空気が入り込むと、外気温よりも低い地下室では水蒸気が飽和してしまい、結露するのです。さらに、コンクリートが完全に水分を放出してしまうまでの数年の間はこの傾向が強く出ますので、かび臭さを招いてしまうことがあります。
これを解消するため、あらかじめ換気システムや除湿システムをしっかり整えておきましょう。家電量販店で売っているようなものではなく、家の設備として設置できるものが好ましいです。また、可能であれば排水の設備まで整えておくとより安心できます。
快適な地下室のつくり方・注意点
メリット・デメリットを比較してもなお、地下室が欲しい、という方はどのようなことに気をつければよいのでしょうか。
地下室には大きく分けて三つのタイプがあります。まずは、全部が地下に埋まっている「全地下」タイプです。窓などがつけられないので居室ではなく、納戸や物置などの大きな空間が欲しい場合にはこのタイプがいいでしょう。
次に半地下タイプ。これは、地下室の部分の3分の1が地下に埋まっているタイプです。地上部分に面している部分があるので、換気や採光の部分でもメリットがあります。
最後に、ドライエリアがあるタイプです。このタイプは地下に外部空間を作ることで通風と採光を確保することが出来るので、リビングや寝室などを計画することも可能です。ではこれらのタイプ別に注意する点などを見ていきましょう。
湿度調節と日当たりの確保
地下室の環境を快適に保つため、湿度調整や日当たりの確保は大事なポイントです。これを行ってくれるのがドライエリアです。
ドライエリアとは、地下室と地面の間に設ける「空堀り(からぼり)」のことを指します。適切にドライエリアを設け、空気を入れ替えできる窓を設置すれば、過剰な湿気を逃がしながら太陽光を取り入れることができますので、「暗い・ジメジメしている」というイメージとはまったく別の地下室を作ることができます。
避難経路の確保
地下室と1階部分をつないでいるのは基本的に室内階段だけです。しかし、これでは火事や地震などで避難経路がなくなってしまうことも考えられとても危険です。この問題もまた、地下室にドライエリアとドアを設けることで解消することができます。ドライエリアには地上に上がるための階段を設けることも大切です。
ドライエリアに鉢物のグリーンを置くと見た目にも快適
換気や日当たり確保、避難経路確保のために設けるドライエリアも、鉢物やプランターで植物を育てれば見た目にも快適でさわやかな空間となります。コンクリート打ちっぱなしでつくることも多い地下室ですが、このような工夫で季節を感じながら過ごすこともできます。
ドライエリアを設けるのなら、雨水対策も必須
地下室は文字通り地面より下にありますので、そこにドライエリアという空間を設けることを検討するのであれば、近年よく話題に上がる「ゲリラ豪雨」に対する備えをしなければなりません。
大雨が降った日に、地下鉄の駅が封鎖される風景をニュースなどでご覧になったことがあるでしょう。あのようなことが自宅で起きないようにするためには、ドライエリアの手すり(コンクリート)をある程度の高さにまで上げておかなければなりません。お住まいの地域、もしくは家を建てようと思われているエリアのハザードマップをご覧になったことがあるでしょうか。洪水が起きたときに予想される水位を確認しておく必要があるでしょう。
地下室は部屋なの?容積率に影響はあるの?
地下室は、基本的に「居室」としては認められていません。居室ではないとなると、サービスルーム(納戸)としての扱いにしかなりません。つまり、「人が常にいると想定されない部屋」でしかないのです。この問題を解消するためにも上記でご説明したドライエリアが有効です。ドライエリアを建築基準法の規定を満たすように設けることで「居室」とすることができるのです。
では、家を建てる際に気になる容積率への影響はどうでしょうか。ある一定の基準を満たせば、地下室は容積率に算入しなくてもよいとされています。
・地階(地下室)の床から地盤までの高さが、その階の天井の高さの3分の1以上
・天井が地盤から1メートル以下
・住宅の用途に供するもので、同建築物の床面積合計の3分の1以下
これらを考えると、容積率の制限が厳しいエリアで満足の行く広さを求めたいのであれば、居室に適合する設備を整えた地下室を設けるのも一つの方法として検討できることがわかります。
まとめ
地下室という空間の有効活用法、いかがでしたでしょうか。
土地が充分にに広いという場所では特に必要ないかもしれませんが、都心などの限られた土地の中でなんとか居住スペースと収納スペースを確保したいと思っていらっしゃる方にはとても魅力的な解の一つと言えるのではないでしょうか。
今回ご紹介したメリットやデメリットを頭に入れつつ、建築のプロと一緒に相談しながら素敵な空間を作っていきましょう。